生活排水を家の外へ排出するのに必要な設備が、浄化槽や下水道です。このふたつは、どちらも生活排水を処理する設備ですが、明確な違いがあります。
今回は、浄化槽と下水道の違いや、それぞれのメリット・デメリットなどについてご紹介します。
■浄化槽とは？
浄化槽は、生活排水を放流する前に、水を浄化するための設備です。家の敷地内に設置し、汚水（トイレから出た排水）・雑排水（キッチン、お風呂、洗面所などから出た排水）・雨水（雨樋から流れ出た排水）を浄化したのち、側溝や河川などに流します。
浄化槽の中には微生物が生息しており、微生物の働きで生活排水がきれいになります。生活排水を浄化せずにそのまま流してしまうと、川や海の水質が悪化して海洋生物や鳥などの生態系に影響が及ぶ可能性が高まります。
人々が衛生的な生活を送るだけでなく、自然を守るためにも、浄化槽は重要な設備です。
・浄化槽には単独浄化槽と合併浄化槽がある
浄化槽には、汚水のみをきれいにする単独浄化槽と、汚水・雑排水・雨水をすべてきれいにする合併浄化槽があります。環境保護の観点から、単独浄化槽の新設は平成13年4月から禁止されていますが、現在でも単独浄化槽を使っている世帯は多く、合併浄化槽への転換が求められています。
市町村の中には、単独浄化槽から合併浄化槽への工事費用に対して、助成制度を設けているところもあります。単独浄化槽を使っているご家庭は、一度市役所などで相談されることをお勧めします。
・浄化槽のメリットとは
浄化槽のメリットは、下水道が利用できない場合でも、汚水を直接河川や側溝などに排出する必要がなくなることです。下水道を使用しないため下水道の使用料がかからないほか、浄化槽の設置工事費用も下水道より安い場合もあります。さらに、下水道の建設費にあたる受益者負担金も、支払いが不要です。
・浄化槽のデメリットとは
浄化槽には寿命があり、本体は20年から30年程度・微生物へ酸素を供給するブロアーは5年から10年程度で交換が必要です。浄化槽の状態に合わせて、定期的な清掃やメンテナンスが必要となるほか、微生物が弱ると自浄作用が働かなくなり、悪臭の原因となります。
■下水道とは？
下水道は、住宅の敷地内にある排水管を下水道本管につなげ、排水処理を行ないます。生活排水は、排水管から下水道館に運ばれ、自治体が管理する排水の終末処理場へと流れていきます。
・下水道のメリットとは
下水道最大のメリットは、生活排水が側溝や河川に流れず処理場へ直接流れていくことから、衛生面に優れている点です。使用者自身での清掃やメンテナンスも不要です。ブロアーのモーター音がなくなるのも、メリットと言えるでしょう。
・下水道のデメリットとは
下水道は、浄化槽よりも設置工事費が高くなることや、毎月の下水道使用料金がかかることなど、金銭面でのデメリットがいくつか挙げられます。
■浄化槽の場合に配水先がないときはどうする？
浄化槽を設置する敷地周辺に、側溝や水路などがない場合もあります。この場合は、蒸発拡散方式（浄化槽から出た水を蒸発させる）・地下浸透方式（浄化槽から出た水を地面に浸みこませる・貯留方式（水を貯留槽に貯めてバキュームカーで吸い取る）のいずれかの方法で処理します。
ただし、上記の方法は自分で選ぶのではなく、自治体や地域ごとで決まっているため、該当自治体の役所に確認が必要です。引っ越しや会社の事務所を選ぶ際には、下水道や浄化槽について事前に確認しておきましょう。
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